1898年イギリスのヴィクトリア女王の即位60周年を記念し建てられたロマネスク様式の建造物。外壁は玄武岩。吹き抜けエントランス部分の天井はビザンチン様式のドームとなっており、大理石のモザイクタイルのらせん階段や丸窓のステンドグラスなど、細部にまで優美なデザインが施されている。デザインはイギリス人建築家ジョージ・マックラエ。
吹き抜けの天井からの吊り下がる世界最大のオルゴール時計・グレートオーストラリアンクロックは時間になると廻り出し、観光客たちを沸かせている。クリスマスのシーズンには最上階まで突き抜けるほどのクリスマスツリーが登場し、毎年話題となっている。
かつてはコンサートホールとして使用されていたが、1970年代には深刻な老朽化による取り壊しの危機に直面。その後500万ドル(約50億円)をかけ再修復され、1984年には世界一美しいショッピングモールとして生まれ変わり、シドニー随一の観光名所となっている。
クイーン・ヴィクトリア・ビルディングの中心的展示物のグレイト・オーストラリアン・クラークは、アボリジニと白人の双方の視点からみた歴史が33のパノラマによって表されている。また、エリザベス女王の蝋人形が展示されていたり、ジョン王が署名したマグナカルタや1986年に書かれたシドニー市民宛のエリザベス2世の手紙などが未開封のまま保存されている。シドニー市民宛の手紙は2085年に開封し、市長が読み上げる予定となっているのだとか。
ほとんどの階にカフェがあり、地元の人達の通り道や集いの場としても大活躍するクィーン・ヴィクトリア・ビルディングは、シドニー市民の日常にすんなりと溶け込み、歴史的建造物の在り方をこのうえなく優美に示唆している。
稲葉 秀一
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