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JR金沢駅東口に降りたつと、巨大なガラスのドーム(もてなしドーム)と鼓門(つづみもん)が迎えてくれた。東口広場をおおう、もてなしドームはアルミ合金製の骨組みに強化ガラスを組みあわせた大きな屋根である。アルミ合金の建築物としては全国最大のものだ。もてなしドームの地下部分は地下広場となっており、多目的空間、待ちあわせエリア、情報発信空間などが広がっている。
青い空が映りこむ、もてなしドームの前面には朱赤の鼓門がある。能や素囃子で用いられる「鼓(つづみ)」をモチーフにした金沢らしいデザインだ。この一見典雅なデザインの内側は、ドームに降った雨水を再利用するための送水管や地下の排気口が造られているという機能性もそなえている。もてなしドームのコンセプトは『 雨風をしのぎ、金沢を訪れた人々にそっと傘を差し出す金沢人のやさしさ、もてなしの心を表す』というものだが、“そっと傘を差し出す”というよりは“ドーンと傘を差し出す”といいたいくらい、見ごたえ十分ながっしりとした構造だ。
鼓門の真下に立ち、もてなしドームをあおぎ見ると「工事期間7年間、総工費172億円」という数字がガラスに反射してキラキラ輝いているような気がする。
7年というとそうとう長い年月だ。莫大なコストがかかっている。メンテナンスは大丈夫なんだろうか。そういえば、昼間だというのに、地下広場は閑散としている。等など、他県民ながら建築に携わるものとしての老婆心がつぎつぎと浮かんでくる。実のところ、デザイン、総工費については市民の間でも賛否両論、意見が分かれるところらしい。
しかしパリのエッフェル塔だって、建設当時は醜悪だとか町並みにそぐわないなどといわれつづけたという。記憶に新しいJR京都駅ビルも賛否両論すざましかった。いつの世も新しい試みをするときは風波がたつものなのだ。
北陸の玄関口、もてなしドームと鼓門が今後どのように地域の人々や観光客に根づいていくのか、じっくりと観察することにしよう。
稲葉 秀一 |
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