|
近代工芸デザイン発祥の地である仙台は、芸術文化交流がたいへんさかんな街である。
せんだいデザイン・ウィーク、せんだい映画週間、せんだいアートアニュアル、MobLab:日独メディア・キャンプ2005 などの企画イベントも軒並みである。それらの重大な拠点となるのは、せんだいメディアテークである。
仙台駅から車で約10分、ケヤキ並木の定禅寺通りに建つ複合文化施設を見にいった。
コンペにより選定された伊東豊雄氏の設計で「流動的な空間」をコンセプトに2001年1月に開館。延床面積21682?、鉄骨造一部RC造、地上7階、地下2階、13本の独立シャフト(チューブ:主に鋼管トラス構造)が
床の鉄骨フラットスラブ(ハニカムスラブ:鋼鈑サンドイッチ構造)を支える構成。 13本のチューブは階段、エレベーターなどのコアとなっているという大胆な構造である。空調は『南側の2重ガラス面(ダブルスキン)と上部の開閉機構で空調コストを軽減しており、夏期は機構を開放し、内側に上昇気流を起こしてガラス面を冷却。逆に冬季は閉めて、断熱性の高い空気層をつくる。』という画期的なシステムである。
図書館、ギャラリー、シアター、ホールなどの施設をそなえる、せんだいメディアテークは美術や映像文化の展示、発表、鑑賞の場であり、メディアを通じて自由に情報のやりとりができる場でもある。「流動的な空間」というコンセプトは建造物の構造からも読みとれるが、文化施設という文化が交流しあう場の象徴ともとらえられる。
いまの日本はお金を使わすことを目的とした商業施設が氾濫している。せんだいメディアテークのような文化の発信地、交流の場が、斬新な建築物を箱としてすくすく育ってゆくのは頼もしいかぎりだ。そういう空間をもっていることを、仙台市民はおおいに誇ってよいとおもう。
深まる秋、定禅寺通りのケヤキ並木がどこまでもつづいているガラス張りの外壁が、並木と一体となっている。“地政がどれほど文化というものを大切にしているか”という問いの答えもまた、ガラス張りの外壁にくっきりと映しだされているのではなかろうか。
稲葉 秀一
|
|
|