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金沢21世紀美術館につづいて金沢シリーズ第二弾「金沢城」。
その昔、加賀百万石と謳われた城下町を治めた加賀藩前田家の金沢城跡地に造られた金沢城公園。
金沢城は1583年(天正11年)前田家が入城して以来、焼失と再建をくり返している。 1602年(慶長7年)落雷により天守閣が焼失して以来、天守閣は再建されていない。
平成13年、釘を使わない在来工法で復元された菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓(ひしやぐら・ごじっけんながや・はしづめもんつづきやぐら)は大きな注目を集めている。これら建造物は、明治以降の木造城郭としては最大規模であり、構造は柱・梁、桁による木造軸組みと土壁・貫を組み合わせた耐力壁による構成となる。なかでも菱櫓は二の丸(藩の重臣たちの邸宅があった場所)で一番高い三層の物見櫓で入母屋造りの屋根をもつ。大きな石落しや千鳥破風の華麗な外観は、天守閣のない金沢城でシンボル的な存在。
外部の視界をより良くするために内堀側の壁のコーナーを鈍角100度、鋭角80度に開く。それにあわせて柱の形状、仕口、屋根形状まですべて菱形となっている。櫓の内部では、構造模型、実際の仕口などをつぶさに見ることができる。
日本の伝統技術のレベルの高さに感服せずにはいられない。
城郭は戦のための砦である。ここが戦場になることを想定し、徹底的に防御と反撃を考えて造られている。伝統技術と先端技術に根ざした城郭建築は、堅牢の先に究極の美にいきついた。
現代の建築物についてはどうだろう。
機能だけでは心が安らがない。美しいだけでは、はなはだ不自由だ。
機能とデザインの調和・融合。
金沢城公園に佇んでいると、建築に携わるものの永遠の課題がふと頭をよぎるのだ。
稲葉 秀一 |
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