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100余年ほど前から岡倉天心がしきりに説いていた。
海に囲まれたわが国にあって、アジア各地との交流が盛んに行われてきた歴史的意義の深い地である九州にこそ国立博物館が必要であると。
「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」というコンセプトのもとに、天心の願いが実現をみたのはつい最近、平成17年10月16日のことである。
太宰府天満宮を参拝のち2〜3分歩くと、博物館行きエスカレーター乗場がある。博物館のある高台まで、所要時間4〜5分の長い長いエスカレーターだ。動く歩道と乗りトンネルのなかをぬけると、そこは山あいのみどりに包まれていた。みどりが映りこむハーフミラーガラスの外壁と、やわらかい曲線を描く青い屋根のコントラストが清冽な印象を与えている。
エントランスのひとつから建物内に入ると、エントランスホールがあり、カフェや講演会、イベントなどに利用されるミュージアムホールが設置されている。
美術展示室は3Fの特別展示室、4Fの常設展示室へとつづき、いずれも木材が多く使われた落ち着きのある色合いに統一されている。壁、天井に杉板を貼り調湿を行う2Fの収蔵スペースには、日本杉と調湿ケイカル板が使用されているのだという。
1Fと2Fの間に免震階が設けられており、『巨大なバネやゴムを設置することで、地震が起こった際、揺れの速度を抑え、被害を最小限にする』という工夫がなされている。160m×80mの大架構屋根、ガラスのダブルスキンとともにしっかりとわが国の宝を守っているのだ。
博物館というと横の移動が多い印象があるが、九州国立博物館は動線が非常に明快で、コンパクトに拝観できる。建築面積 6,790?、延床面積 30,085?、 SRC造、S造 地下2階 地上6階。菊竹・久米設計共同体設計のこの博物館建築は、外観、構造とも従来の博物館という概念を快く裏切るものである。
日本地図を天地逆さまに見てみた。そうすると日本海は内海と捉えられ、日本が昔から中国、韓国をはじめ、アジアの各地と切り離せない関係でありつづけてきたことが容易に想像できる。
わたしは九州国立博物館が、アジアのなかの文化交流の拠点施設となることを願ってやまない。
稲葉 秀一
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