|
鳥取県安来市の足立美術館が横山大観の蒐集と庭園で有名なことは聞いていた。写真で見て知っていた。その足立美術館にようやく来た。来てしまった。私は今、6つの庭園、枯山水庭、寿立庵の庭、池庭、白砂青末庭、亀鶴の滝のうちのひとつ、枯山水庭を目の前にしている。その風景は、目覚めたばかりのように眩しく鮮烈である。
米国に庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング/JOJG」という雑誌があるのをご存知だろうか。JOJGが2007年に発表した日本庭園ランキング上位5位を発表した。それによると5位 無鄰菴(京都府)、4位 栗林公園(香川県)3位 山本亭(東京都)、2位 桂離宮(京都府)、1位 足立美術館(島根県)となっている。ブルーノ・タウトが「永遠なるもの」と大絶賛した数奇屋風建築の最高峰たる桂離宮が2位で足立美術館が1位。しかも5年連続というのだから堂々の日本一といえる。
枯山水の庭は、春霞の山を背景にすっくと佇立する立石と春のいのちのうつくしさが玉緒となって造形されたさつきが鮮やかなコントラストを生み出している。庭師の手入れが一部の隙もなく行き渡った端正な庭のうつくしさは、なるほどアメリカ人好みといえるだろう。6つの庭園に四季折々のうつくしさ。季節ごとに訪れても24の美に出合えるというものだ。
足立美術館創設者の足立全康氏は安来市に生まれ、裸一貫から事業に成功をし、近代日本画を中心に絵画を蒐集してきた。なかでも日本随一を誇る横山大観のコレクションは圧巻であり足立美術館は別名「大観美術館」とも呼ばれるという。
足立全康氏は日本にめずらしいスケールのおおきな事業成功者であって、社会に還元するということをまっすぐに実践しておられる。そんな精神もアメリカ人にしっくり響くところなのかも知れない。
横山大観没後50年の今年、各地で大規模な展覧会が開かれているという。日本の庭園の贅をつくした足立美術館で観る大観は格別趣き深く感じられると思うのは気のせいではあるまい。
稲葉 秀一
|
|
|