江戸末期、箱館開港にともない徳川家定の命で函館市のほぼ中央に建造された星形の城郭、五稜郭。写真のように堀の水が凍ると星形のかたちがくっきりと浮かびあがる。このうつくしい城郭は西洋式稜堡とよばれる様式で、500年ほど前にヨーロッパ各地で造られたという。
五稜郭の大きさは 堀の内側がおよそ東京ドームの3倍の広さだという。3カ所の出入口には「見隠塁(みかくしるい)」という五稜郭内を見通せないための土塁が積まれ、内側以外の3方が石垣となっている。正面と左右の両面には,石垣が積まれ、大きさは長さ約44m、幅約14m、高さ約4m60cm。 なかでも正面の出入口の南西側の本塁石垣は、他の場所よりも高く築かれており、上部には刎(は)ね出しや武者返(むしゃがえし)または、しのび返しと呼ばれる防御のための迫り出しである。刎ね出しとは石垣の最上部を庇(ひさし)のように刎ね出し、敵を刎ね返す仕掛けである。
三角形の形状が印象的な出塁を半月堡、またの呼び名を馬出塁(うまだしるい)といい、これも郭内への出入口を防御するために設置されている。
五稜郭を形作る土塁は本塁(ほんるい)といい、この土塁は幅約27〜30m、高さ約5〜7m。五稜郭の土塁は堀割からの揚げ土を積んだもので、土を層状に突き固める版築(はんちく)という工法で造られている。
本塁と水堀の間に幅約10m、高さ約2mの低塁(ているい)と呼ばれる土塁があり、五稜郭の高さ13〜16mほどあるのと並びほぼ平らな地面となっている。裏門側の北側が少し高く、正面の南側にかけて少し傾きがある。五稜郭の正面側に低い土手があるが、これは五稜郭が造られたとき堀からあげられた土を盛ったもので長斜坂(ちょうじゃざか)と呼ばれているという。
冬に函館を訪れた折に五稜郭タワーより五稜郭の星形を眺めたときは、降り積もる雪の銀河に五稜郭が大地に光る一等星といった具合で浮かび上がっていた。桜の頃に出向いたときはお堀の水面が桜を映す鏡となって煌めいた。
これからの季節、梅雨そして真夏にはどんな表情をみせてくれるだろうか。
稲葉 秀一
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