2016年後半は、冬のオーストラリア、シドニーより6回の連載でお届けします。
まずはシドニーのシンボルマークのひとつ、(GPO)旧中央郵便局。
19世紀中頃、ゴールドラッシュに沸くオーストラリアに、イギリスや他のヨーロッパ諸国から移民が続々と到着し、シドニーの商業、工業化が一気に進んだ。
遡る1840年には切手を貼って出す「ポスト投函制度」がイギリスではじまり、植民地であるオーストラリアにも早速取り入れられた。当時の通信手段のメインであった手紙の重要性を物語るかのように、シドニー市内の住所は中央郵便局を起点として作られている。旧中央郵便局の住所はまさに「No.
1 Martin Place」なのである。
シドニー市内の中心部、オーストラリアの金融中心街といわれるマーティンプレイスを歩くと優雅な時計台が目に入ってくる。(GPO)旧中央郵便局の外観はそのままに内部は近代的なホテルとブティック、地下には飲食店が集まったグルメスポットからなる複合施設の建物である。
現在は5ツ星ホテルとなっている建物のエントランスに立つと、くだんの時計台の時計が東洋からの訪問者を見下ろしていた。このネオクラシカルな歴史的建造物は1865年から1899年にかけて建設された中央郵便局(GPO)ビルを修復保存し、ホテルのロビー&ラウンジとして蘇えらせたもの。
美しいルネッサンス様式の外観はヨーロッパの古都に迷い込んだかのようであるが、いったん建物内部に入ると、ガラスの天井より光をふんだんに取り入れた開放的なロビーとなっており、市松模様の床に優美な白い階段、深紅の絨毯が敷かれた演出などとともに、歴史的建造物を活かしつつ、近代的なデザインを融合させるオーストラリアのセンスが感じられた。
ちなみにこの階段は映画『マトリックス』の黒猫が横切るシーンにも登場している。
ホテルのロビーにある真っ赤な郵便ポストは今も活躍中とか。
真夏の日本への葉書を投函してみようか…。
稲葉 秀一
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