近代絵画の殿堂

Paris

近代美術館、誕生への道

1970年代後半のパリには、1840年代までの美術を扱うルーブル美術館と、1977年に開館した現代アートを扱うポンピドゥー・センターがあり、印象をはじめとする近代美術を一堂に解する美術館が切望されていた。そこで廃駅の駅舎を美術館へと再生させる国家プロジェクトが始まった。
その建築の最大の特徴は、近代的な鉄材(鉄骨構造)とガラスの産業素材、伝統的な石材の融合にある。駅舎の骨組みには、エッフェル塔を彷彿とさせる約12,000トンの錬鉄(メタル構造)が使われ、開放的な大空間を実現。一方で、近隣のルーヴル宮殿など周囲の景観と調和させるため、その鉄骨を覆い隠すように外壁には豪華な白色の石灰岩(ライムストーン)が惜しみなく使用されている。1986年12月、世界最大級の印象派・ポスト印象派のコレクションを誇る「オルセー美術館」が誕生したのである。

全景

全景

外観

外観

駅舎時代の大時計

天井部には約35,000平方メートルものガラスが敷き詰められ、館内に豊かな自然光が降り注ぐ。1980年代の美術館への改築時には、ガエ・アウレンティらの設計により、内装の展示壁面へ新たに特有の石灰岩(ビュクシー・ストーン)などが追加され、19世紀の美術品を最高に引き立てる舞台装置が生まれた。

建物正面

 エントランスの金の大時計

金時計

 金時計

駅の記憶ボールト天井

   

元駅舎が持つ「ガラス天井から差し込む光」という魅力を最大限に活かしつつ、陽光だけでは美術品の劣化を招くことや天候によって見え方が変わるため、天井の鉄骨フレームに沿って最先端の人工照明を配置する工夫がされている。自然光と人工の光を巧みにミックスさせることで、印象派などの名画が最も美しく見える光量を安定して供給している。

天井近景

 天井近景

究極の展示空間

駅舎の持つ1900年代のレトロな雰囲気(ベル・エポック時代)を残しつつ、地上階の中央回廊には、明るいベージュ系の石灰岩(トラバーチン)が敷き詰められ、大理石やブロンズの「彫刻作品」が背景の石の質感と見事に調和する、重厚かつ明るい空間を演出。開館から25年が経った頃、館長ギ・コジュヴァルらの主導で、主に5階の印象派・ポスト印象派ギャラリーを中心とした大規模な模様替えが行われ、壁の色を以前の明るい白やクリーム色から改修し、青みがかった濃いグレー、ディープブルー、深いグリーン、紫などの暗くシックな色がギャラリーごとに塗り分けられた。床材も光を反射しやすい明るい石材から、光を優しく吸収する暗い色の木製フローリング(ダークウッド)へと変更され、光を追求した印象派の絵画(モネやゴッホなど)が持つ鮮やかな色彩や筆跡が、あたかも発光しているかのように浮き上がる効果を生み出すことに成功している。

館内風景

 館内風景

ゴッホ自画像

 ゴッホ自画像