門のある駅
かつて石炭で栄えた門司の港町に、門司駅として開業したが1914年(大正3年)のこと。1942年(昭和17年)に門司港駅と改称され、1988年(昭和63年)に鉄道駅舎としては初めて、国の重要文化財に指定された。2019年(平成31年)には、6年に及ぶ復元工事を終え、大正時代の姿に復元されたJR門司港駅がその姿を現した。
駅頭端式と呼ばれる、駅から発生するすべての路線が放射状にのびる始発駅の門司港駅は、旅の始まりと終わり、出会いと別れの交差する駅舎というステージにふさわしく、ネオルネサンス様式の「門」を表す左右対称の造りが印象的な建物である。
大正時代の夢
木造2階建の駅舎の1階コンコースに入ると、アール・デコの意匠がみられる高い天井、クラシックな照明、レトロな発券所、まるで大正時代の映画の中にまぎれ込んだような雰囲気。
昔は切符に1、2、3の等級があり、それに応じた待合室が別々に準備されていた。
2階の旧貴賓室は現在、明治・大正期の門司港駅周辺の写真展示室となっており、旧次室、屋根裏が覗ける小窓なども見学できる。
時を遡る旅の門
1988年の国の重要文化財に指定された門司港は、駅舎のルネサンス様式の建築もさることながら、随所に見られる看板の書体の旧字体、木のぬくもりを感じさせる自動改札機の茶色の塗料、柱にあしらわれた真鍮板、鉄道発祥時そのままの黒詰襟の駅長さんなど、細部への徹底したこだわりが感じられる。
門司港駅は時を遡る旅の門なのだ。