水の神殿
バリ島で最も美しいといわれるタマン・アユン寺院は、1643年メングウィ王国の鎮護寺として建設された。
バリ島の主食はお米。島のいたるところにライステラスと呼ばれる棚田が広がっている。 その棚田に水を送るのが、水の神様を祀り、別名水の神殿とも呼ばれるタマン・アユン寺院。米をはじめ植物の豊穣や繁栄の象徴としてバリの人々に広く親しまれ、寺院のぐるりは碁盤の目のような水路に囲まれている。
茅葺の塔
広大な敷地内は芝生の美しい庭園があり、庭園奥に佇立する威厳に満ちたチャンディと呼ばれる割れ門を入ると、10基もの茅葺の塔メルが建ち並ぶ聖なる空間となっている。 チャンディ内はヒンドゥー教徒以外は立ち入れないけれど、塀越しに境内の様子を伺い観ることができる。メルはバリ・ヒンドゥーの聖なる山「アグン山」を模していると言われ、山の精霊が祀られている。
バリ独自の立体的装飾
庭園に建つ茅葺の建造物にはバリ独自の精緻なレリーフが、まるで建造物を埋め尽くすかのように施されている。その表情豊かな彫刻は、神々の存在がバリの人々の身近にあることを感じさせてくれる。
バリヒンデゥーの哲学"トリヒタカラナ"
2016年6月、タマンアユン寺院は、インドネシアバリ州の文化的景観としてユネスコの世界遺産に登録された。
同時登録されたのは、バトゥール湖、ウルンダヌ・バトゥール寺院、ペクリサン川流域の棚田、バゥカル山保護区のジャティルウィの棚田の5箇所。
これらに共通する文化価値として、"トリヒタカラナ"神と人との自然の調和を説いたバリ・ヒンドゥーの哲学があると言われている。
伝統的灌漑システムを持つタマンアユン寺院は、神の水と人を結ぶ哲学を体現した建造物なのである。