世界遺産の建造物

富岡製糸工場

建築方法

創業当初に建てられた富岡製糸場の建造物は、横須賀製鉄所建設に携わったフランス人のオーギュスト・バスティアンが図面を引き、日本人の大工や職人によって建てられた。

木の骨組みに、煉瓦で壁を積み上げて造る「木骨煉瓦造」という西洋の建築方法で建てられ、屋根は日本瓦で葺かれた和洋折衷の建造物。

指定面積 55,391.42平方メートル内に重要な建造物が点在するが、世界遺産に登録された建造物をご紹介しよう。

●繰糸所(国宝)
繭から糸を取る作業が行われていた建物。長さ約140mの巨大な工場で、創設時にフランスから導入した金属製の繰糸器300釜が設置され、世界最大規模の器械製糸工場。
小屋組みにトラス構造を用いることで建物の中央に柱のない大空間を実現した。

●東置繭所(国宝)
主に繭を貯蔵していた建物。2階に乾燥させた繭を貯蔵、1階は事務所・作業場として使用。長さおよそ104mにもおよぶ巨大な繭倉庫。

●西置繭所(国宝)
東置繭所と同様2階は繭を貯蔵していた建物。大きさ・構造は東置繭所とほぼ同じだが、1階の北半分の東面は官営期に蒸気機関を動かすための石炭置き場として使われてため東面には壁がなかった。
この部分の煉瓦壁は昭和56年頃に積まれたもの。

    東置繭所 東置繭所        

主な資材

主に石、木、煉瓦、瓦で構成され、鉄枠のガラス窓や観音開きのドアの蝶番などはフランスより輸入された。

建造物の核となる材木の杉は妙義山、松は吾妻と主に官林より調達。小振りの材木は近くの山林より調達。礎石となる石は連石山(現甘楽町)から切り出して造られた。

富岡産材ルーバー 東置繭所内部基礎

煉瓦の壁

煉瓦は、フランス人技術者が瓦職人に作り方を教え、福島町(現甘楽町福島)の笹森稲荷神社東側に窯を築き、瓦と共に焼き上げた。
その中心となったのは韮塚直次郎を含む埼玉県深谷からやってきた瓦職人たち。煉瓦の目地には、モルタルの代わりに漆喰を使い、原料となる石灰は下仁田町青倉・栗山で調達。煉瓦壁は、フランドル積みと呼ばれる工法で積まれた。

フランドル積み煉瓦 フランドル積み煉瓦

国の文化財指定そして世界遺産へ

富岡製糸場は昭和62年(1987年)操業を停止した後、平成17年(2005年)7月に敷地が国の史跡に、その翌年平成18年(2006年)7月に創業当初期の建造物が国の重要文化財に指定された。

平成26年(2014年)6月には「世界遺産一覧表」に記載され、同年12月には繰糸所、西置繭所、東置繭所の3棟が「国宝」となり、富岡市が所有・管理を行っている。

東置繭所内部2階 東置繭所内部2階

参考文献:しるくるとみおか「富岡市観光ホームページ」

稲葉秀一/INABA建築設計事務所