八角形のランドマーク

北九州市旧大阪商船

異なるふたつの構造

明治17(1884)年に設立された海運会社の大阪商船門司支店として使われていたこの建物は、大正16(1916)年の竣工で設計は当時大阪で活躍していた河合幾次によるもの。
東京駅丸の内駅舎で有名な辰野金吾が得意とした技法で、オレンジ色のタイルに石の帯を施した外観が印象的。 建物の正面と背面で構造が異なり、建物の西と北面の道路側は煉瓦型枠の鉄筋コンクリート造、裏側は木造モルタル仕上げとなっている。外観のデザインはドイツ、オーストリアで興ったゼツェッシオン様式でまとめられ、2つの大きなアーチ窓と八角形の塔屋が印象的。

建物正面

建物正面   

建物外観

建物外観    

塔屋の灯台

竣工当時はの建物手前は桟橋になっていて、1階には大陸航路の待合室や税関の派出所が置かれ、2階には大阪商船の事務所であった。ガラス張りの八角形の塔屋は、灯台の役割も兼ねていたのだというのだから微笑ましい。確かに建物の正面に立つと、まるで優美な貴婦人にお目にかかったような愉しい心持ちになる。ゼツェッシオン様式の特徴である幾何学模様も随所に見られ、細部へのこだわりが感じられる。

塔屋

幾何学模様が施された塔屋

門司港の町のどこにいても目につく八角形の塔屋は、当時からこの町のランドマークとして人々に愛されてきたのであろう。今も変わらず門司港レトロ地区の象徴として存在し、その優美な姿は地元民や訪れた人々の目を楽しませている。