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建築散策記のバックナンバー14で、島根県立古代出雲歴史博物館を訪れたことを書いた。このたびはご本殿が60年ぶりに遷宮が行われこの5月には、大国主大神が修造の終わった御本殿にお還りになる「本殿遷座祭」が執り行われ、本殿遷座祭のあと、一連の神事が執り行われるまえの静かな出雲大社に詣でた。
遷宮とは、出雲大社サイトによると 『御神体や御神座を本来あったところから移し、社殿を修造し、再び御神体にお還りいただくこと。その意味には諸説があり(1)木造建築の建物を維持していくため(2)社殿の建築など様々な技術を継承していくため(3)神社は清浄であるため(神の力がリフレッシュされる)』とある。
平成21年より御本殿のみならず摂社・末社も、修造工事が進められてきたが、平成24年3月に完成した御本殿の修造は、大屋根檜皮(ひわだ)の撤去、野地板の修理、新しい檜皮による葺き作業など。新しく生まれ変わった御本殿は匂い立つような新しさに輝いている。
本殿の大屋根の修造には、銅板などは130年ぶりに『ちゃん塗り』と呼ばれる特殊な塗装を施された。『ちゃん塗り』とは、明治の正遷宮の折に鬼板や千木・勝男木などを覆う銅板に松ヤニやエゴマ油、鉛、石灰を混ぜたものを塗ること。独自の光沢を放つ緑色のうつくしさは神を迎えるに相応しい品格のある仕上がりとなっている。
また。約70万枚もの膨大な檜皮(ひわだ)が敷き詰められた大屋根は、神の社にふさわしく堂々とした品格に溢れている。180坪、軒先の厚さは約1m。檜皮は防水性に優れ、伝統的木造建築の最高の屋根材だとか。大屋根には震災被害にあった東北地方の木材も使用されている。
大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の御神体が、清らかに蘇った御本殿にお還りになる5月10日、神々たちはどんなお顔をされてこの清らかな出雲大社に降りられるのであろうか。
天照大神(アマテラスオオミカミ)から国譲りの使命を受けた建御雷神(タケミカヅチ)が大国主神(オオクニヌシノカミ)と対面した場所である稲佐の浜では波が寄せては返し、砂浜さえも神々を迎えるために清められているようであった。
稲葉 秀一
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